助動詞と言えばまず思い浮かべるのは can や will ではないでしょうか。
進行形の be や完了形の have を思い浮かべる方もいると思います。そして、be able to や be going to といった助動詞とよく似た意味を持つ語句もあります。
これらはすべて助動詞っぽいと一括りにされがちですが、実際には役割が別物です。
- 法助動詞:can, will といったいわゆる助動詞
- 相助動詞:be, have といった構文を作るうえで必要な助動詞
- 疑似法助動詞:be able to, be going to のような助動詞的に働く語のカタマリ
学校文法ではまず触れられることのない、この「法」や「相」という助動詞の働き方の違いを理解すれば
- なぜ助動詞には過去形があるのか
- そのうえでなぜ助動詞の過去形は現在形で使用できるのか
- なぜ助動詞の後ろは必ず「動詞の原形」になるのか
- 1つの助動詞になぜ「許可」や「推量」といった複数の用法があるのか
- be able to や have to といった助動詞的な表現と助動詞の違いは?
- なぜ be や have は助動詞として扱われるのか
といった、英語学習者が一度は抱く疑問を共通のルールの上ですべて説明できます。
助動詞の仕組みを本質的に理解して、暗記に頼らない使える英語を身に着けましょう。

つまり何の役に立つの?

助動詞の仕組みを理解することで感覚的に使い分けられるようになるよ
英語における助動詞とは
助動詞の働きを理解するにはまず、助動詞という言葉を正しく理解する必要があります。
英語では助動詞を auxiliary verb と呼びます。auxiliary は「補助の / 予備の」という意味の形容詞で、後ろに続く verb は「動詞」という意味を持つ語です。
つまり、助動詞とは補助的に働く ”動詞” ということです。
動詞は文の中で時制(現在・過去といったいつの話か)を示す役割も担っていますが、can や will などの法助動詞を含む文では、その節の時制を最初の法助動詞が引き受けます。
その結果、後ろに続く動詞に求められるのは行為の内容を描写することだけになり、時制に応じて形を変える必要がなくなるので、助動詞の後ろの動詞は原形になります。
言い換えると、時制を受け持つ語句は原則としてその節の最初の動詞(または助動詞)だけなので、1つの節で法助動詞を続けて並べることはできません。
can や will といった助動詞に could や would のような過去形が存在するのは、助動詞がもともと動詞から派生し、動詞のような性質を部分的に残しているからなのです。
間接話法など時制の一致が必要な場面で can → could や will → would のように変化する現象はこの延長線上にあります。

この、助動詞には動詞のような側面があるという部分がポイントだよ
法助動詞の「法」とは
英語には時制(現在形・過去形)や態(能動態・受動態)のように、出来事をどうとらえるかを動詞の形や組み立て方で表す仕組みがあります。
法や相もその仲間で、動詞(助動詞)が文の中で出来事をどのように捉えているかを示す枠組みです。

英語を話すうえで必須の知識ってわけじゃないから、この記事では必要な部分だけふわっと解説するよ
法(mood)とは、話し手がその出来事をどのように捉えているか、どの程度現実のものとして扱うかというスタンスを動詞の形や助動詞で表す仕組みです。
代表的なものに命令法と仮定法があります。
- 命令法:動詞の原形
- 仮定法:動詞の過去形
動詞の原形を用いる命令法は、誰かにこれから特定の行動をするように要求する際に使われます。
つまり、命令法は発話の時点ではまだ事実ではないけれど、そうなることを要求・期待している(実現させたい)という話し手のスタンスを動詞の形で表しています。
Everybody, go home.
(みなさん、お家に帰ってください。)
▸ 普通は主語 Everybody に合わせて goes になるが命令法では変わらない
仮定法は、現在のことでもあえて動詞の過去形を使うことで、この話は事実としては扱わないという話し手のスタンスを動詞の形で表しているのです。
I wish everybody went home now.
(みんな家に帰ってくれないかなぁ。)
▸ now(現在)の話だが過去形 went が使われている = みんなまだ帰ってない

どれくらい事実かを表す法は、いつの話かを表す時制とは別の判断軸で動詞の形を決めるってことだね
法助動詞とは
法助動詞に分類されるものには can, could, will, would, may, might, shall, should, must などがあります。
例えば I take a cheeseburger.(チーズバーガーにするわ。)という文に法助動詞が加わると、以下のように出来事そのものではなく、ある出来事をどの程度現実として扱うか(どう関与するか)という話し手のスタンスが上乗せされます。
I should take a cheeseburger.
(チーズバーガーにしなきゃ。)
I might take a cheeseburger.
(チーズバーガーにしようかな。)
should は「~すべき」「~のはず」という意味のように、ある程度それを現実として扱う話し手の判断が表れています。
一方で might は「~かもしれない」と控えめな判断を表し、その出来事を現実として扱うかどうかを一度保留しています。
このように、法助動詞は出来事そのものではなくそれに対する話し手の関わり方を表すため、1つの法助動詞から複数の用法が生まれやすくなります。

許可・依頼・推量などは関与の仕方が違うだけなんだね
いわゆる過去形の法助動詞である could や would が現在の文脈で使われる理由も、ここから説明することができます。
これらは単純に can や will よりも時間的に過去であることを示しているわけではありません。
現在の文脈であえて過去形を使うことで、その出来事を現実として強く押し出さず、距離を取って婉曲的に提示しています。
その結果、丁寧な依頼や提案を表す言い方や、断定を避けた控えめな推量を表す言い方になりやすいのです。
つまり、過去形の法助動詞でも「どの程度それを現実のものとして扱うか」という判断は現在の時点で行われており、時制とは別の軸なのです。
▾それぞれの助動詞が持つ核心的なニュアンスと用法についてはこちら▾

相助動詞の「相」とは
相(aspect)とは、出来事がどの段階にあるかという観点で捉えるための仕組みです。いつ起きたかを表す時制とは区別して考えられる点がポイントです。
英語で中心となる相には、進行相と完了相の2つがあります。
- 進行相:be + 現在分詞
- 完了相:have + 過去分詞
進行相とは進行形が表す様子のことです。出来事がすでに始まってはいるものの、まだ終わっておらず途中段階にあることを表します。
Prices are rising.
(価格が高騰している。)
▸ 価格の上昇が進行中でまだ終了していない
完了相とは完了形が表す様子のことです。出来事がすでに起こり、その結果が基準となる時点に影響している状態を表します。
Prices have risen sharply.
(価格が急騰した。)
▸ 価格上昇という出来事が完了し、その結果が現在に残っている

現在完了形の中で完了相と現在時制が共存しているように、いつ起こるかを表す「時制」とどれくらい進んだかを表す「相」は独立した概念なのがポイントだよ
相助動詞とは
進行形を作る be や完了形を作る have は相助動詞と呼ばれます。進行相や完了相といった相の成立を補助しているからです。
法助動詞と異なるのは、相助動詞は文の構造的に時制を担う位置にいるだけで、文の中で必ず時制を担うわけではないという点です。
be や have が時制を担当することで進行相・完了相が成立しているわけではありません。
つまり、法助動詞の後ろに相助動詞を続けて使うこともできるのです。
Prices were rising.
(価格は高騰していた。)
▸ 進行中の段階にある出来事が過去に起きたことを表している
Prices might have risen more slowly.
(価格はもっと緩やかに上がったかもしれない。)
▸ 法助動詞の後ろに相助動詞が続く例

be や have は法助動詞のように動詞に意味を足すんじゃなくて、文の骨組みを支えている感じだね
do の助動詞としての立ち位置
英語には「do-support」と呼ばれる助動詞としての do があります。疑問文や否定文で使われる、文の構造を補助する do のことです。
Did he like pasta?
(彼はパスタを気に入りましたか?)
He didn’t like pasta.
(彼はパスタが好きではなかった。)
助動詞を含む疑問文は、例えば I can swim. が Can I swim? になるように肯定文の主語と助動詞を倒置します。また、否定文では I can’t swim. のように助動詞に not をくっつけます。
しかし、助動詞を含まない文ではこの操作ができません。そこで、文の構造を成立させるために助動詞としての do を挿入し、疑問文や否定文を作っています。
文を成立させるうえで助動詞の位置に置かれるため、結果的に do は時制を引き受けます。
言い換えると、助動詞の do は肯定文でも使うことができます。この肯定文で使われる do は強調の do と呼ばれます。
強調の do が置かれる位置は法助動詞と同じく文の中心になる動詞の直前です。
そのため動詞の代わりに時制を引き受けますが、法助動詞のように直後の動詞を強調するわけではありません。
助動詞としての do は法助動詞のように話し手のスタンスを表してはいないからです。
do は文の構造を助ける助動詞であり、 文全体が表す事実そのものを強調することがポイントになります。
He did like pasta.
(彼は本当にパスタが好きでした。)
▸ パスタが本当に好きというスタンスではなく、パスタが好きという事実が本当だと強調している

強調の do は強く発音するのがポイントだよ
疑問文や否定文の do はその働きの近さから、be や have と同様に相助動詞として説明されることがありますがこれは間違いです。
do は相を補助していないからです。構文上の必要性から挿入され、その結果として時制を担わざるを得ないだけなのです。

見かけ上は同じ働きをするから be, have, do をまとめて第一助動詞と呼ぶこともあるけど、結局大事なのは名前じゃなくて働き方だよ
▸ 英語の時制まとめ
疑似法助動詞とは
疑似法助動詞とは be able to, have to, ought to, be going to などの動詞を中心とした語のカタマリで、can, must, should, will のような意味を表す語句の総称です。
意味の面では法助動詞に近い働きをしますが、文法的には助動詞ではなく動詞句として扱われます。
つまり文の中での振る舞いは動詞と同じで、時制の影響を受けて形が変わることもありますし、法助動詞の後ろに続けて使うこともできます。
be able to や have to のような法助動詞と似た意味を持つ語句は、法助動詞がルール上表すことができない意味を表すためにも使われます。
I had to wash the dishes.
(私はお皿を洗わなければならなかった。)
▸ must(~しなければならない)の過去表現として had to が使われている
I will be able to pass the exam.
(私はその試験に合格できるだろう。)
▸ can(~できる)の未来表現として will be able to が使われている

used to や ought to みたいな動詞の過去形が固定化されたものはその限りではないけどね
will と be going to や must と have to のように同じ意味領域を表す場合、法助動詞は法が表す話し手の関与の仕方が前面に出やすいため、疑似法助動詞に比べて主観的な意見になりやすいという特徴があります。
一方で疑似法助動詞は、状況や事実を客観的に描写することが多い傾向にあります。
It will rain.
(雨が降るだろう。)
▸ 話し手がそう判断している
It is going to rain.
(雨が降るだろう。)
▸ 兆候など状況の描写になりやすい
| 意味 | 主観的 | 客観的 |
|---|---|---|
| ~できる | can | be able to |
| ~だろう / ~するつもり | will | be going to |
| 昔はよく~したものだ | would | used to |
| ~すべき | should | ought to |
| ~しなければならない | must | have to |

法助動詞は主観的、疑似法助動詞は客観的ってのはあくまで傾向で、全部が全部そうではないよ
助動詞の種類 まとめ
英語の助動詞には、話し手のスタンス・判断を表す法助動詞、進行相・完了相の構文と時制を支える相助動詞、助動詞に近い意味を表す動詞句である疑似法助動詞があります。
- 法:出来事をどの程度現実のものとして扱うかという話し手のスタンス
- 相:出来事がどの段階にあるかという見方
法助動詞はある出来事をどの程度現実のものとして扱うかという判断を表し、直後に続く動詞が表す内容を補足します。このニュアンスから、過去形の法助動詞でも現在の文脈で使われることがあります。
相助動詞は進行形や完了形といった構文を作るうえで必要な助動詞で、進行相や完了相といった相の成立を補助します。
相助動詞が節の先頭に立つ場合は時制を担いますが、法助動詞が先頭に立つ文では原形のまま続き、時制は法助動詞側が引き受けます。
do は相を作る助動詞ではなく、疑問・否定という形を作るために挿入される助動詞です。
疑似法助動詞は法助動詞に近い意味を表しますが、文の中での振る舞いは動詞です。つまり、時制や構文の制約を受けます。
法助動詞・相助動詞という括りだけが説明されがちですが、この名前の違いの先にある本質:何を補助しているかを意識することで、暗記に頼らない助動詞の理解ができます。

ほう、そうですか

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