英語の冠詞には a と the があります。よく、
- a は初めて出てきたもの
- the は知っているもの
と説明されますが、それだけでは足りません。
実際、このルールを知っていても使い分けに迷った経験があるはずです。冠詞は、暗記だけで処理できるものではないということです。
大事なのは、日本語にはない冠詞の考え方を身に着けることです。
この記事では、冠詞の使い方にある共通のルールから、
- a と the の違い
- a を使った表現
- the を使った表現
- 冠詞が使えない表現
といった、英語学習者が躓くポイントを基本から応用までわかりやすく解説します。

本質を理解して暗記英語から卒業しよう!
a と the の違い
理屈よりもまずは以下の例文を読んでください。a と the の違いが一撃で分かります。
A wild black cat appeared!
(やせいの くろねこが あらわれた!)
The wild black cat used scratch!
(やせいの くろねこの ひっかく こうげき!)
a を使った1つ目の例文 A wild black cat appeared! では、どのくろねこかはわからないけれども、1匹のやせいのくろねこが登場したことを表しています。
一方で、2つ目の例文で使われている The wild black cat は、その登場したくろねこがひっかいたことを示しています。
a と the の根本にある考え方は、
- 不定冠詞 a:あるカテゴリの中から一例を提示する
- 定冠詞 the:あるカテゴリの中から特定のものを提示する
ということです。

黒猫はいっぱいいるからね

The cat is not me! I’m a nice cat.
不定冠詞 a, an の使い方
不定冠詞 a は名詞や名詞句の前に置かれます。
あるカテゴリの中から一例を提示し、結果的に
- 新情報:初めて話に出てきたもの
- 単数形:1つとして扱うもの
を表します。必ずしも聞き手が知らない情報だから a が必要なわけではありません。
後ろに続く単語が a, e, i, o, u といった母音から始まる発音の場合、an に変化します。
an important task のように形容詞が名詞を修飾する場合も、直後の単語が母音から始まるなら対象になります。
綴りではなく発音の都合で変化することがポイントで、例えば herb や MP3 といった単語に不定冠詞が付く場合は、an herb や、an MP3 のようになります。

意味の変化はないよ
There lived a wizard in a forest.
(森には魔法使いが住んでいました。)
▸「~ある / いる」を表す there 構文は a を使って新情報を述べることが多い
It’s been a while!
(久しぶり!)
▸ しばらくの間(while)を1つの区切りとして扱っている
I’ll be there in an hour.
(1時間後には着いてるよ。)
▸ 結果的に1つのものとして扱うため、数字の1の代わりになることもできる

「あ~、あれのことね」ってならないものに a を使うんだね!
不定冠詞と and
不定冠詞の a や an は、とある一例を提示するため1つのものに対して使われます。その結果、後ろにくる名詞は1つのまとまりとして捉えられます。
そのため and を使って情報を追加する場合、and の後ろに a を置くか・置かないかで意味が変わってしまう点に注意が必要です。
- and の後ろに a を置かない場合:2つの要素を1つのまとまりとして扱う
- and の後ろに a を置く場合 :独立した1つのまとまりが2つあることを表す
例文で確認して見ましょう。
I met a doctor and comedian.
(私は医者であり芸人でもある人に会った。)
▸ 医者と芸人が1つのまとまり(ひとりの人間)として捉えられる
I met a doctor and a comedian.
(私は医者と芸人に会った。)
▸ 1人の医者と1人の芸人(別々の人間)として捉えられる

例えば
- a wife and husband
- a knife and fork
みたいに、2つで1セットとして成り立つものも同じ考え方だよ
~につき… を表す
不定冠詞は、結果として何かをひとまとまりの単位で捉えます。
期間や数量を表す名詞の前に a を置くことで、2ヶ月に1回といったように、ある程度区切られた範囲での頻度や比率を表すこともできます。
I take medicine three times a day.
(1日3回薬を飲みます。)
It’s a dime a dozen.
(どこでも手に入るようなものだよ。)
dime:10セント硬貨 / dozen:1ダース
▸ 10セントで1ダース買えるような、ありふれたものを指すイディオム

per と意味は一緒だけど、ちょっとカジュアルな感じがあるよ

1つのまとまり(単位)ごとに~ってのがポイントだね!
a + 固有名詞
人やモノの名前を表す固有名詞は、唯一の存在である(他に同じものがなくカテゴライズできない)ため、基本的には不定冠詞はつきません。
これは言い換えると、他にも同じような人やモノが存在する場合は、固有名詞にも a や an をつけることができるということです。
~の製品・作品
例えば Sony のような会社名はこの世に1つしか存在し得ません。これ以上カテゴライズできないので、原則として会社名は無冠詞で使われます。
その一方で、かつて Sony は自社の CM の中で
It’s a Sony.
というキャッチフレーズを使用していました。
ソニーという会社は1つですが、ソニーが作った製品はたくさんあるからです。つまり、その商品がソニーが作ったものの内の1つであることを伝えたいのです。

Walkman とか PlayStation とか、製品について言及する場合はソニーという大きなカテゴリの一例として扱えるからね

I have a Toyota.
(私はトヨタ車を所有しています。)
みたいな使い方もできるよ
~という人 / ~のような人
人の名前を呼ぶときは、目の前の相手か、知っている人の話をします。同姓同名の人はいますが、誰の話をしているかがはっきりしているので不定冠詞をつけることはありません。
一方で、電話対応など、相手のことをまったく知らない場面もあります。
その場合、例えば A Mr. White のように名前の前に a をつけることで、数いる White さんの内のひとりが電話をかけてきたことを表すことができます。
A Mr. White is calling you.
(ホワイトさんという方からお電話です。)
▸ White というカテゴリの内のひとりを指している = 誰のことかわからない

どんな人かは知らないけど、って感じだね
また、例えば Steve Jobs や Pablo Picasso のように秀でた存在は、個人としてではなく1つの概念として扱われることがあります。
これらの人名に不定冠詞をつけることで、その人物と似たような才能がある(同じカテゴリに含まれるひとりである)ことを表すこともできるのです。
She is a Mozart.
(彼女は現代のモーツァルトだ。)
▸ Mozart のような才能というカテゴリに含まれていることを表している

いずれの用法にせよ、不定冠詞 a, an は同じ括りの中のどれか1つであることを表しているのがポイントだね
定冠詞 the の使い方
定冠詞 the は名詞や名詞句の前に置かれます。
あるカテゴリの中から特定のものを提示し、結果的に
- 既出情報:文脈からどれのことか分かるもの
- 唯一性 :そのカテゴリの中で1つしかないもの
- 総称 :そのカテゴリ全般・そのもの
などを表します。
定冠詞 the は複数形の名詞(特定の集団)にも使うことができる点に注意が必要です。
また、後ろに続く単語が a, e, i, o, u といった母音から始まる発音の場合、/ðə/ という発音が /ði/ に変化します。
an と同様に意味の変化なく、the important task のように形容詞が名詞を修飾する場合も、後ろの単語の音が母音から始まる場合は /ði/ の音になります。
university のように、母音でも子音の発音をする単語に the が付く場合は /ðə/ の発音になるということでもあります。

内容を強調したい時は、子音で始まる語でも /ði/ になることがあるよ
He is the smartest student.
(彼は一番頭の良い学生です。)
▸ 学生という括りの中での特定のひとり
Not all the students are as smart as he is.
(その学生たちすべてが彼のように賢いわけではない。)
▸ 文脈から分かる特定の集団
The telephone completely changed our lives.
(電話が私たちの生活を一変させた。)
▸ 特定の電話についての話ではなく、発明というカテゴリの特定の1つ

on the right とか in the middle みたいに特定の方向や場所を表す場合にも the がつくよ
The United States is a superpower.
(アメリカは力のある国だ。)
▸ 50の州(カテゴリ)を代表する呼び方
the + 固有名詞
定冠詞 the は、
- 太平洋・ナイル川など:the Pacific Ocean, the Nile River
- 太陽・月など:the sun, the moon
など1つしかないものに付けられると説明されがちですが、the が必要なケースをわざわざ難しくして暗記する必要はありません。
これらはすべて、海・川・天体といったカテゴリの中の特定の1つを指しているだけです。名前ではなく、その属性で判断しているのです。
また、the Coca-Cola Company のようにカテゴリが明示されており、その中の特定の1つであることを表す場合は会社名でも the がつきます。

後ろにつく river とか company がカテゴリを表しているんだね!
the + 形容詞
英語の形容詞には、
- rich man(裕福な人)
- impossible mission(不可能なミッション)
のように名詞の性質を詳しく説明し、カテゴリを区切る役割があります。
この形容詞が the と結びつくと、
- 裕福という性質を持つ何か :the rich
- 不可能という性質を持つ何か:the impossible
のように、その性質で区切られた特定のカテゴリそのもの(総称)を指すようになります。
この the + 形容詞の形は、その性質を持つもの全体を表すため、「~な人々」「~なもの」のように訳されます。
それが意味として自然だからです。

people や things が元々あったうえで省略されてるわけじゃないよ
We reach out to the poor.
(私たちは貧しい人々に手を差し伸べます。)
▸ 貧しい人々の総称
The English are a hardy people.
(イギリス人は我慢強い人々だ。)
▸「the + 国名」で特定の国民の総称を表すこともできる

ちなみにこの a people は、人の集まりを1つの単位として考えていて、民族・種族といった意味があるよ
We must accept the inevitable.
(避けられないことは受け入れなければならない。)
▸ 特定の出来事ではなく、避けられないこと全般について述べている

the + 形容詞の形で名詞句として扱っているのがポイントだね
無冠詞:冠詞がいらないケース
不定冠詞はあるカテゴリの一例を提示するため、複数形の名詞や、そもそも数を意識しない不可算名詞には必要ありません。
それ以外にも、不定冠詞 a も定冠詞 the も不要なケースがあります。
代名詞の所有格がある場合
my, his, her, your といった代名詞の所有格もまた、あるカテゴリに属する特定のものを指す役割があります。
そのためこれらは、カテゴリ内の対象を表す a や the といった冠詞とともに用いることはできません。
This is my pen.
(これは私のペンです。)
▸ ペンというカテゴリの中でも私のものを指している

だから、
- This is a my pen.
- This is the my pen.
と言うことはできないよ
手段や行為の内容に焦点がある場合
例えば go to bed で「寝る」という意味になるように、名詞そのものよりも、それを手段として行われる行為(役割)に焦点が当たる場合、名詞は無冠詞になります。
ベッドというカテゴリ内に存在する、1つの物体としてのベッドについて言及しているわけではないからです。
言い換えると、bed は必ずしも冠詞がつかないわけではなく、モノとして扱うときには冠詞がつきます。
I go to bed around 9 p.m.
(いつもだいたい9時に寝る。)
▸ ベッドの役割について言及している(モノとして扱っていない)
I bought a bed. The bed is comfortable.
(私はベッドを買った。そのベッドは快適だ。)
▸ ベッドというカテゴリの1つについて言及している(モノとして扱っている)
他にも、「バスで行く」と言うときは、車両としてのバス(バスというカテゴリ内の1つ)ではなく、それが移動手段であることに焦点があります。
そのため、I go by bus. のように無冠詞になります。
一方で「海に行く」は、通常 I go to the sea. のように定冠詞が必要です。the をつけることで、海というカテゴリ全体 = 海という場所を表しているのです。
つまり I go to sea. と言ってしまうと、そこで行われる行為に焦点があたり、「船乗りになる」というまったく別の意味になってしまうため注意が必要です。

複数形にしろ、手段にしろ、無冠詞はカテゴリの中の1つという認識がそもそもないのがポイントだね!
冠詞の使い方 まとめ
英語の冠詞の使い分けには以下のようなものがあります。
- 不定冠詞:あるカテゴリの中から一例を提示する
- 定冠詞 :あるカテゴリの中から特定のものを提示する
- 無冠詞 :カテゴリの中の1つという認識がそもそもない
そこから、それぞれの冠詞がつく・つかないで、そのニュアンスに大きな差が生まれます。
つまり冠詞とは、話し手が物事をどのように捉えているかを表すサインなのです。
これらの本質が分かれば、冠詞は暗記項目ではなくなります。

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不定冠詞 a はカテゴリの中の対象が定まっていなくて、定冠詞 the は定まっているのがポイントだね
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